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昭和を生きた新選組

経済界(2003)

1333円+税

ISBN-10: 4766782682
ISBN-13: 978-4766782684

昭和を生きた新選組

幕末を生き残り、第二の人生を日本の近代化に捧げた、新選組の志士がいた 

目次

しばし、お耳を拝借

プロローグ 

第一章瓦解する幕府

第二章家老暗殺

第三章衝鋒隊へ

第四章北越戦争

第五章長岡城の攻防

第六章桑名士魂

第七章時代への叛旗

第八章立志ふたたび

第九章生きる道は一つ

エピローグ 

あとがき

オモテ話 ウラ話

この題名から、稗田利八(ひえだ りはち)のことを 思いついた方は相当な新選組フリークであろう。
稗田は新選組時代は「池田七三郎」を名乗っていた。
一応、確認されている新選組の生き残りとしては、 最も後世まで生きた人物である。
他にも、斎藤一、永倉新八、島田魁らが 戊辰戦争後も生き残った。
しかし、多くの生き残り隊士たちが その余生を静かに過ごしたのに対して、 なお烈々たる闘志を抱きながら明治日本に 大きな足跡を残した人物がいた。
それが、この本の主人公 高木貞作(たかぎ ていさく)と山脇正勝(やまわき まさかつ)である。

高木は一橋大学の前身・商法講習所設立のメンバーに、 山脇は後に三菱重工となる三菱長崎造船所の初代所長、 初期三菱の管事(現在の専務取締役)にまで登り詰めた。

なぜ、彼らは燃え尽きなかったのか。
所属した組織が負けて、消滅して、 自分たちが信じた大義が無惨に葬り去られて、 それでもなお新しい日本国のために戦い続けたのは なぜなのか。

本を読まれて、そのあたりが見えて戴ければ幸甚です。

(1)実像と虚像
高木貞作と山脇正勝は実在の人物で、 彼らが自藩(桑名藩)の家老を、主命で斬ったというのは 事実です。

その後、古屋作左衛門の衝鋒隊に属して転戦、 後に桑名藩に復帰し、越後、会津、庄内と転戦。 最後は箱館に行き、新選組に入隊したのも史実です。

ただし、本人たち、特に山脇正勝はほとんど何も 残していないため、高木貞作のこれまた数少ない 回顧や講演録をもとに構成をしました。

(2)二人の性格
 高木貞作は、後に日本屈指の帳合法、 今で言う会計の知識を持っていたわけで、 数理には非常に明るい人であったと思われます。 会計に関する著作もあります。

 一方の山脇正勝は、その紳士的な外見からは 窺い知れないほどの酒豪で、 荒くれ者の多かった炭鉱(高島炭鉱)の責任者を 見事に勤め上げた所を見ると、 情と理のバランスのとれた逸材だったことがわかります。

(3)脇役たちとのつながり
衝鋒隊は調べれば調べるほどすごい荒くれ組織で、 なんであんな軍団の長を古屋作左衛門のような 超インテリが率いたのか、実に不思議です。 私なりに本書の中で解き明かしてみました。

松平定敬と高木、山脇の関係は、 本当に親密だったようです。  高木が定敬に呼ばれて西南戦争に行ったのも事実です。

勝海舟と高木の関係も、なかなか面白かったです。  勝・高木の関係はその後も順調でしたが、 彼らが関わった商法講習所での出来事を 読者はどう思われたでしょうか。

岩崎弥太郎と山脇正勝の関係は、 島津斉彬と西郷隆盛のようなコンビではなかったか、 という気がします。  とにかく気が合った二人で、弥太郎の山脇に対する 信頼感は半端ではなかったようです。 (詳しくは本書で)。

(4)新選組
二人が土方歳三と箱館で会ったことは はっきりしていますが、 近藤勇や沖田総司ら京都時代の新選組と どのような交遊があったかは現在まで不明です。

しかし、特に山脇正勝は外交方として 京都に在住していたこともあり、 もし当時の日誌などが見つかれば、 そうした記述があるかもしれません。 (京都当時の新選組側の資料には、 二人は登場しません)。

ただ、京都時代、つまり全盛時代の新選組は 圧倒的な強さを誇っていましたから、 箱館での新選組とは随分雰囲気が変わっていた のではないかと思います。

むしろ、新選組結成当初の緊迫感は、 箱館新選組の雰囲気に近かったのでは、 と思います。

(5)大河ドラマのような人生
桑名藩の一藩士が、 鳥羽伏見、越後、会津、庄内、箱館と転戦し、 その間、衝鋒隊、桑名藩、新選組に所属。 敗戦後アメリカに留学。

帰国後、高木は一橋大学の前身・商法講習所設立。 後、第十五銀行、横浜正金の支店長等歴任。

山脇は高島炭鉱所長、三菱長崎造船所、三菱の 九州総責任者になりました。

官途につかず、世を捨てず、 全力で生を全うした二人の人生は、 まるで「大河ドラマ」そのものです。

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